想声 side I
キスしたい、と思ったときにキスしてきてくれた。
手に触れたい、と思ったときに手を握ってくれた。
この人と恋人になれて夢のような毎日。
その中で最近不思議に思う。
どうしてこの人はこんなに僕の気持ちが分かるのだろう。
愛ゆえかな、と甘ったるい結論を出したいところではあるが、
それにしても鋭い。
察する、という表現ではあまりあるほどにタイミングがいいのだ。
勿論それは非常にうれしいし、
それが嫌なわけじゃない。
むしろ不思議に思うたびこの人が好きになる。
気になることは、それ自体じゃない。
ふと疑問に思っているときに彼が見せる表情だ。
どこか痛みを感じているような、そんな顔。
どうしてこんな顔をするのか。
僕がさせているのか?
だったら…言ってほしいのに。
そんな顔貴方にさせたくない。
こんなにこんなに、あなたが大好きなのだから。
もし僕に原因があるのなら全力で直すから。
…お願い、です…。
「ちょっと男子二人!見つめあってて気持ち悪いわよ!」
おっと。
急にいらだちを隠さない声が耳に入った。
いけない、涼宮さんの感情がささくれ立っている。
彼の視線を独り占めしていた事が気に食わなかったのだろう。
困ったな、この人はもう僕のものだけど、
彼女の機嫌はこの世界の最重要事項だ。
嫌だけど彼に…そう思って彼のほうに視線を向けると、彼は涼宮さんの方を向いてこう言った。
「そう機嫌悪くすんな。
さっきまで結構楽しそうだったのに、何かあったのか?」
え?さっきまで…?
彼は、さっきまで僕と向かい合って…彼女の方なんて見てなかったのに…。
「え…なんで分かるのよ。」
「オレをなめんなよ、お前のことくらい分かる。」
ズキッ
「ば…ばかっ!何言ってんのよ!」
慌てる彼女を彼はふっ、と優しい目で笑った。
当然彼女の機嫌は急上昇する。
だが、僕の機嫌は急下降だ。
僕の事だけじゃない。
彼は、彼女の事も分かっているのだ。
そのことを痛いほどに苦く思った。
次の瞬間、驚いたように彼はこちらを見た。
なんだ?表情に出してはいないはず…。
「古泉?どうした、いきなり。」
「…いきなり、とは?」
「何か、機嫌悪…っ…。」
そこまで言って、彼ははっと眼を見開く。
「…いや、何でもない。」
「…。」
彼は不自然に言葉を切った。
おかしい。
いったい何が起こっている?
そう思えば目の前の彼の表情はみるみる曇りだす。
そうかと思えば彼は急に立ち上がった。
「…悪い…先に、帰る。」
「え…ちょっと。」
「キョン?どうしたのよ?」
「用事…思い出した。」
それだけ言うと、彼は鞄を手に。
逃げるように部室を出た。
「キョン?!」
バタンと、ドアを閉める音が響いた。
何が起こったのか、わからなかった。
To be Continued…
テレパスキョンくん、さらにシリアスに。
最初から見るとちょっと以上不自然…かな…;;
ホントにすみません…;気まぐれ更新なもんで…。
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